こんばんは。
第3回となる今回は前回予告したように「フライトの効果」についてをシャフト同様「物理現象」視点で話していきます。
少し前置きが長いですが、お付き合い御願い致します。
フライトの種類
今回考察するフライトは
1.スタンダード
2.シェイプ
3.カイト
4.ロケット
5.スリム
の5種類とします。
チップ・バレル・シャフトは全て同条件とし、無風・同気温・同湿度・1G且つ同プレイヤーが全く同じリリースを行ったと仮定しておきます。
また今回のフライトはL-Styleさんから出ているシャンパンリングがつけられるタイプのものとします。
矢羽根について
おそらく、ダーツを見て真っ先に思い出すのが弓矢の矢における矢羽根だと思います。
慶應義塾大学 理工学部 機械工学科の創造演習というところに「矢羽根と空気抵抗」という発表があります。
このPDFの中に「矢周辺の気流を安定化させる.また,羽根があることで回転力が増し,ジャイロ効果により軌道が安定する」
という一文があるように、矢の軌道を安定させるために付いています。
ただし、この矢羽根については屋外で横風などの外的要因による軌道のブレを防ぐ為の効果を持っていることもあり、参考程度に紹介しました。
フライトが受ける力について
まずはフライトが受ける力についてお話します。
注目していくのは「円運動」と「空気抵抗」になります。
まず円運動から。
上記第1回で慣性モーメント及び回転軸について少し触れました。
ここで説明する円運動は「前方への飛行を考えない回転軸を中心とした運動」条件下とします(ただし、地面に対して垂直に動く運動のみで、水平側の運動は未考慮)。
芯抜き以外の飛び出し方、所謂「表抜き」「裏抜き」ですが、どちらもダーツの重心を中心として円運動をしています(厳密には芯抜きも円運動していますが分かりやすいものを選んでいます)。
円運動を行うとき、一番速度が出る部分は回転軸から一番遠い場所。
つまりはフライトの先端になります(速度=半径×角速度)。
次に空気抵抗です。
ここから説明する空気抵抗は「前方への飛行及びダーツの円運動を考慮した運動」条件下とします。
空気抵抗とは文字通り「空気中を物体が進むときに空気から受ける力」のことをいいます。
空気抵抗Dは次の式で表せます。
D=(1/2)×ρ×V^2×S×CD
ρ: 空気密度(20℃)=1.2(kg/m^3)
V: 速度(m/s)
S: 物体の前面投影面積(m^2)
CD: 抗力係数(物体の形状で決まる定数)
簡潔に説明すると、空気抵抗は
・速度が出るほど大きくなる。
・空気が当たる面積が増えるほど大きくなる。
ということが言えます。
そしてダーツが手(指)から離れた場合、前方へ飛行しながら回転するためフライトの前方投影面積は次第に増加します。
ここまでが「フライトが受ける力」についてです。
この受ける力のかかり方が、フライトの形状によって変化します。
フライトの種類による効力
ようやく本題です。
ここまでのお話は「ダーツは飛びながら円運動をしていて、その円運動によってフライトに風が当たる面積が増えたり減ったりする」ということでした。
では
1.飛び出し
2.放物線の頂点付近
3.盤面に刺さるまで
の3ゾーンでの動きについて考えてみたいと思います。
1.飛び出し
このゾーンでは、フライト面積よりフライト先端の形状が影響してくると考えています。
フライト先端の幅を大小で考えます。
・フライトの先端が大きい場合
スタンダード・シェイプ・カイト(若干小さいですがこちらに)の場合フライトの先端が大きくなっているため飛び出しでフライトが上を向く時の空気抵抗が大きく、上方向に向いていた円運動の加速度がマイナスとなりフライトが持ち上がる力が小さくなります。
⇒矢角がつきにくく、地面にに対して平行に近い状態になる。
・フライトの先端が小さい場合
ロケット・スリムの場合フライトの先端が小さくなっているため、飛び出しでフライトが上を向く時の空気抵抗が小さく、上方向に向いている円運動の加速度のマイナスは先端が大きい場合と比較してフライトが持ち上がる力は大きくなります。
⇒矢角がつきやすく、地面に対して垂直に近い状態になる。
2.放物線の頂点付近
頂点付近ではフライト面積が関わっていると考えます。面積で比較すると
スタンダード>シェイプ>ロケット>カイト>スリム
です。
円運動によりフライトが持ち上がっていく時、放物線のラインに対するダーツの角度が次第に大きくなります。平べったいものを起てることと似たようなことが起こり、空気に当たる面積が次第に大きくなっていきます。
・フライトの面積が大きい場合
スタンダード・シェイプ・ロケットは角度が付くに連れて前方投影面積が大きくなり、空気抵抗が大きくなります(寝かせたうちわを持ち上げることをイメージすると分かりやすいです)。
空気抵抗が一定以上に増加するとフライトは後ろに引っ張られ、振り子のように重心のあるバレルが持ち上がります。
⇒重心のあるバレルがフライトより上に持ち上げられる。
フライト面積が小さい場合
カイト・スリムはフライト面積が比較的小さい為矢角がついた状態での空気に当たる面積がスタンダード・シェイプに比べて小さいです。
一定の空気抵抗はありますが、後ろへ引っ張る力は小さいためだんだんとバレルが持ち上がっていく形になります。
⇒重心のあるバレルはフライトと同様レベルに持ち上げられる。
3.盤面に刺さるまで
2.の後から盤面に刺さるまでは、2.と同様にフライトの面積が影響してくると考えます。
2.でフライトの面積が小さい場合、盤面に刺さるまでの間に地面と水平・バレルの先端が若干持ち上がる程度の状態で変化してくと予想しています。
そのためここではシェイプ及びロケットが2.までほぼ同じ状態変化を起こしたと考えます。
・フライトの面積が大きい場合
盤面付近では前進運動と重力の影響により下方向の加速度が付いています。
重心により引っ張られる場合、面積が大きい場合は空気抵抗が大きくなりフライトのみ残るような形で盤面に刺さります。
この時ダーツが下を向いた形で残るため、フライトは前傾姿勢(フライト先端が浮いているj形)です。この時フライトの角度によりダーツを前方へ進めようとする力が発生するため、上記空気抵抗と相まってダーツが伸びると感じることがあります。
・フライトの先端が小さい場合
大きい場合と比較し、空気抵抗が小さくなるためフライトも同様にした方法へ加速します。
この時フライトの先端が狭い場合(シェイプとロケットで比較すると分かりやすい)、ロケットのほうが先端が狭いのでうちわの先端が狭いのと同じように空気抵抗が小さくなり盤面近くで落ちきる動作となります。
以上が、フライトの効果についてです。
可能であればスタンダード・シェイプ・ロケット・スリムの4種類を同じセッティングで試してみた動画でも撮りたいと思います。
遅くなりましたが第3回はこの辺で。
また次回。